舌の癖
一体、舌の癖とは何だと思いますか。
そもそも、舌には定位置が在るのです。それは、通常安静にしている時は、舌自体は上顎の上の方に張り付いています。そして舌の先端は上の前歯の5ミリ程度後方にあります。そして上下の奥歯は咬み合わさってなく、やや空隙が開いています。
ただ、この様な舌の定位置を考えた事がある人は殆ど居ないでしょう。
しかし、コロナ前のマスクをしていなかった頃では、喋っている際に、舌先がちょろちょろ見える人は居ませんでしたか?
この様な人は、喋り方も通常と違うので、以前は「舌足らず」と言われる場合が有ったと思います。まさに、これが舌の癖の一つなのです。
これは専門的には低位舌と呼びます。つまり舌は上顎に張り付いて居なければならないのに、下顎の歯の間に通常は存在します。
これの何が問題なのでしょうか?この様な低位舌は大人になってから成る人は殆ど居ません。成長期に成るのです。成長期と言えば、顎骨や顔面の骨が成長する時期です。この時期に舌がどこに有るかによって歯列の形は変わりますし、ひいては顔貌まで変わる場合も有ります。
それでは、どの様に歯列は変わるのでしょうか?
その前に、正常な上下の顎の関係をご説明致します。簡単に言えば、茶筒の上と下の関係に当たります。つまり、上が大きく、下が小さいのです。
これが、低位舌の場合、逆転する場合が多くなります。下が大きく、上が小さくなるのです。そして、形態も上顎の歯型は上から見ると、通常はUの字の形をしていますが、V字に近くなります。そして下顎の歯型は大きなUの字になります。
何故こうなるのか?これは舌は筋肉の塊だからなのです。この筋肉が歯を押すことによって歯列は成長するからです。つまり正常の舌の位置の場合は、上顎の歯列の成長を促します。そしてさほど、下顎を押すような事は有りません。
しかし、低位舌の場合は、下顎の歯列に左右の力がかかりますので、舌の形の様にU字型に広がります。更に、舌が前方に顎を押す力が働きますので、受け口の様になる場合が多いのです。その代表例として政治家の〇沢一〇さん。芸人のザ〇ヤ〇さんなどです。
それでは低位舌の原因は何でしょうか?私自身がそうだったのですが、何らかのアレルギーなどでしょっちゅう鼻が詰まっている場合です。鼻が詰まっているので、口で息をするしかないのです。そうすると舌が上顎の方に有れば、息がしづらいので舌を下顎の方にくっつけて、口を開いて呼吸をする様になるのです。
また、鼻づまりが無くても、口をポカーンと開いている場合は、舌を下顎の方に置かないと息がしづらくなるのです。
つまり、舌の位置は呼吸と密接な関係があるのです。鼻づまりの場合は、先ずは耳鼻科に受診をお勧めします。鼻づまりが無い場合には先ずは、口ポカーンにならないように注意を向けさす事です。そして既に低位舌になってしまっている場合は、マウスピース型の器具を口の中に入れて舌の力を排除することもします。
いずれにしても、小児期に口をポカーンと開いているのは良くないです。それに伴う低位舌が顔面の成長に影響を与えるからです。
そして、この舌と言うのは、ベローと出す舌だけでは有りません。その舌にも舌筋群という塊があるのです。この筋肉にパワーがあるのです。
米国の場合、この舌の癖を治す専門職まであります。しかし、日本では歯列矯正を行っている歯科の一部で行われているだけなのです。その名前は口腔筋機能療法(MFT)です。
当院では、この様な低位舌にも対応が可能です。
文責 理事長 久保倉弘孝