顎関節症(がくかんせつしょう)

顎の不具合をいいますが、外傷により、こめこみの顎関節の部分に何か異物が入り感染している様な感染性の疾患は除外されます。つまり非細菌性の顎の不調です。

ただ、顎の不具合と言っても、顎を動かす筋肉に障害があるもの、顎の関節の関節円板に障害が有ったり、円板の位置がズレたりする場合。あと、精神的な疾患が複合している場合が有ります。

原因は、歯を接触させた食いしばりが主な原因で有る事が多いです。これにより、咀嚼筋に障害が起きたり、関節円板のズレが起こるからです。また、米国では咬み合わせ(顎の位置)は主な原因ではないとされていますが、歯科医師がパッと見て、この方は顎の不具合があるだろうと思える顎の位置があります。専門的には2級咬合という、顎が後方に位置している場合です。その中でも、上顎の前歯が内側に傾斜する2級2類咬合は、顎関節症になり易い咬み合わせと言えます。その理由は下顎が後方に押し込まれるかみ合わせのため、関節円板が前方に偏移しやすいからです。


30年くらい前は、顎関節症の場合、関節の部分に針を刺して洗浄を行ったりする治療が最新とされたことも有ります。しかし、現在はこの様な治療方法は殆ど行われなくなりました。私ども敬友会では長い間、顎関節症を見てまいりました。しかし食事がまともに出来なく、泣いている様な患者さんでも、マウスピースを入れておくような簡単な方法でも1年後には大抵の症状は無くなっています。つまり、多くは五十肩の様な自己解決型疾患と言えます。

療は非ステロイド系の鎮痛剤を服用して経過観察することや、マウスピース状の装置を作って夜間に入れてもらう事をします。また、食いしばりに関しては、仕事の忙しさやストレスが大きく関係しています。よってリラックスをしてもらって、夜間就寝時の食いしばりを抑制する事も重要になります。


ただ、顎関節症に精神疾患や線維筋痛症などが併発している場合は、難治性であり、ほかの診療科との共同治療が必要になります。

左側の歯型の模型から右の様なプラスチック製のカスタムマウスピースを巣作成します。顎関節症の治療の補助的な装置です。親知らずがある場合は、必ず、親知らずまで装置に含める必要があります。一般的には上顎に装着いたします。

コラム 

顎の関節(顎関節)は意外にも順応性が高い部分でもあります。

歯科医師は、顎関節といえば、かなりこだわりのある部分です。この顎関節の動きである顎運動の解析装置もあり、分析をすることがあります。しかし、その半面、先天疾患で顎関節が欠損している人もいます。それでも、問題なく食事ができる場合が多く、非常に順応性が高い部分とも言えます。

若い人の顎関節

左の図は顎の関節の図です。しかしこの図は若い人を図案化したものであり、実際には下顎骨の下顎頭という部分は、いろいろな変形をしているのが普通です。そして、関節円板は側頭骨と下顎骨が接する部分に存在している関節の間の座布団の様なものです。しかし、この関節円板もMRIを撮影してみると、前方にズレている場合やすり減っている場合も多いのです。

この様な変形やズレが有っても、多くは困る事なく生活されています。



症例

以前から、相模原敬友会歯科と同じ法人の小机歯科に通院されていた患者さん。義歯を装着した70代の女性。

ゴミを出しに行って躓いて転んで下顎を強打したそうだ。その後、口が開かなくなったが放置。一か月後には少し口が開くようになったので、整骨院に受診。

当然、レントゲンは無いので経過観察となった。

そして、打撲から1年後に、歯の被せものが外れたので来院。その際にレントゲン撮影をしたところ、右の下顎骨の一部が骨折している事が判明。


しかし、現在は食事にも全く困っていない事と、咬み合わせのズレも見られませんでした。また、CTによっても、骨折をした骨の断片もそれほど問題の無い位置にありました。


骨粗しょう症のお薬を服用されている事もあり、このまま骨折部は経過観察としました。

この症例を経験して、骨折した部分は関節円板に当たっていると思われますが、自然治癒となったと思われます。通常はこの様な骨折は口腔外科で手術をして骨の整復を図ります。しかし、その様なこともしないで、治癒を達成できました。結果的には、この患者さんは非常にラッキーだったと思われます。

顎関節のレントゲン写真事故前
顎関節のレントゲン写真事故後
顎関節の事故後のCT