矯正歯科

歯並びの良し悪しは、見た目の問題だけでは無く清掃性も関係するのはご存じだと思います。しかし、それだけでは無く、歯は全体で噛む力や歯ぎしりの時の過度な力に対応します。よって歯並びが悪い場合は、特定の歯に強い力が働くために、それらの歯からダメになってくる場合が多いのです。つまり良い歯並びは、機能美も備えているのです。又、歯の位置は顎の関節にも影響を与えます。つまり、顎関節症と言う顎の疾患の原因になっている場合も多いのです。

良い歯並びは、見た目だけでは無く、歯そのものを長持ちをさせるために必要なのです。

歯並びを治す時期

小児の反対咬合や、出っ歯は早期治療が有利です。

成人矯正は年齢に関係なく治療ができます。影響を与えるのが顔面骨格です。

成人の矯正について

歯に力を持続的に加えると、骨の中での位置を変更できるのです。よってもしも1日22時間以上持続的に押す事が出来れば、位置を替える事は可能です。全てこの原理原則で歯を動かします。つまりずっと歯を押し続ける様な装置を入れておくのです。

ちなみに、これは歯の周囲に歯根膜という膜が有るからで、インプラントの様な人工物にはありませんので、インプラントは押しても一切動きません。

当院で行う矯正治療の方法は2種類あります。

①ワイヤーを使う方法

②透明マウスピースを使う方法

①ワイヤーを使う方法

歯にブラケットというワイヤーを固定しておく為のパーツを接着します。そこにワイヤーを装着し固定します。このワイヤーには、歯をずっと押しておく力が入っていますので、徐々に歯を動かし整えます。古い方法と思われるかもしれませんが、個々の歯を正確に動かす事が出来るので、やはり矯正治療の基本装置です。ただ、近年使用するワイヤーが非常に進歩して参りました。30年以上以上前にはステンレススチールと言う硬いワイヤーしか無かったので、強い力が歯にかかった為に、初期はかなり痛かった様です。それからニッケルチタンと言う材質が開発され、マイルドな力になりました。そして最近では、ゴムメタルと言う、更に進化したβチタン合金が開発されて矯正治療も大きく変わって参りました。ゴムメタルは車のサスペンション用に開発された金属で超弾性があります。

これにより小臼歯と言う歯列の真ん中の歯を4本抜かないで済むようになりました。

医療法人社団敬友会では、ゴムメタルを用いた、非抜歯矯正を積極的に推進しています。そして、すべての歯科医師が矯正治療ができるようにトレーニングされています。

症例

36歳女性 

下顎の前歯が内側に1本入っています。又、上顎前歯も内側に大きく傾斜しています。
小臼歯の抜歯は行っていません。

通常の矯正方法なら、上下4本の第一小臼歯を抜歯します。しかし、実際に抜歯をして矯正を始めると抜歯をしたスペースの閉鎖に難渋し、多大な時間を要する場合が多いのです。この様に非抜歯で矯正をしますと、一見、大変に見えますが、2年程度で終了しています。

ゴムメタルを用いる矯正治療について

歯を動かすには、ステンレスの様な鋼材で出来たワイヤーを使います。しかし、ステンレス鋼材は曲がりにくいという性質を持っています。よって歯の矯正治療に使う場合は、いろいろと鋼材をまげて、ループというスプリングの様な構造を付加して歯に装着します。

また、このステンレス鋼材の後に出現したのが、形状記憶合金である、ニッケルチタン合金によるワイヤーです。この鋼材は弾性力が非常に高いので”しなり”があります。よって、歯の取り付けた矯正装置には、ステンレス鋼材の様なループを付加しなくても取り付けられます。しかし、このワイヤーはステンレスの様に自由に曲げることが出来ないのです。

これらの、ステンレス鋼材とニッケルチタン鋼材の中間の性質を持つものが、ゴムメタルと命名された鋼材です。この鋼材は自動車のトヨタグループの豊田中央研究所で開発されました。種類的にはニッケルチタン系の金属です。

このゴムメタルは、ステンレスの様に直角に曲げることができます。それでいて、曲げていない部分には、ニッケルチタンの様なしなやかさを持つのです。この性質があると、ステンレスのワイヤーの様に複雑なループを曲げる必要が無くなります。それでいて柔軟性があるために、ガタガタの歯並びの場合でもワイヤーを取り付けることが出来るのです。

これだけの説明では、一般の方には意味が分からないと思いますが、このゴムメタルワイヤーは「曲げたり、ひねったりしても、柔軟」のために、複雑な歯の動きを一度に再現できるのです。よって、矯正期間が短く済む傾向があります。

抜歯ケース

通常のニッケルチタンワイヤーによる矯正治療

大抵は、ニッケルチタンのワイヤーを入れると、前歯が前方に移動してゆきます。それを修正できないので、小臼歯を抜く方法が取られます。



立体レベリング

ゴムメタルによる矯正治療

矯正の最初の段階から、長方形の断面のゴムメタルワイヤーを使う場合が多いので、奥歯を立てる方向の力を加える力を与えることが可能です。これができると、奥歯の前方にスペースが出来るので、前歯を後方に移動させることが可能になります。よって、小臼歯を抜かなくて済みます。しかし、下顎の親知らずの抜歯は必須になります。



①マウスピースを用いる方法(シュアスマイル)

シュアスマイルは世界最大の歯科用品メーカーのデンツプライシロナ社が提供するシステムです。原理はワイヤーと同じで持続的な力をかけて歯を動かします。ただ、一度に動かす事は出来ませんので、パラパラ漫画の様に少しずつ動かして行きます。その1コマずつに、マウスピースを作ってゆくのです。実際には毎回、歯型を採るわけではなく、パソコン上で歯の動きを再現して3Dプリンターで作成されたモノを使って行います。そのマウスピースの枚数は少ない場合で数十枚。多くなりますと片顎100枚を超える場合があります。

ただ、このマウスピース矯正も理論的にはワイヤーと同じですのでワイヤーでの矯正が出来ない歯科医師は扱わないほうが良いです。そして、ワイヤーに比べて個々の歯を動かす事は苦手なので、症例は限られます。又、ワイヤーを併用した方が良い場合もあります。

シュアスマイルの場合、凡その診断をして歯の動きをシュミレーションする事が出来ます。また、CTのデーターと重ね合わせができるので、骨の中での無理な歯根の動きをさせない設計ができます。


症例

31歳女性

術前
術後 アタッチメントと言う出っ張りを歯に一時的に接着してあります。これは矯正治療終了後に外します。

インビザラインは、どこで治療しても同じではありません。歯の動かし方はすべて歯科医師が指示をしなければならないからです。